2013年1月2日水曜日

三人目【Shintaro Yosida】PULLの権化




吉田慎太郎のことをもう一度よく知るため、僕は11月某日、石川穣一(26)と会ってきた。彼は吉田の仕事仲間。吉田のことを「頼れるアニキ的存在」と語っている。

なお、僕は、吉田について次のような疑問を胸に抱いていた。
(1)仕事人間なのか。つまり、仕事のことしか考えていないのか。
(2)なぜセミナーにお金を投資するのか。そこで学んだことはどう生きているのか。

石川への取材は、この二つの問題をはっきりさせるためと言える。なお、”草食系” なのかという問いはもうない。前編で述べたような理由から、”草食系” という用語自体から離れることにした。

前編はこちら




【仲間から見た吉田】

石川と僕が二人で会ったのは、千葉県柏市にあるカフェ。吉田と石川の思い出の場所だ。

ここではアジアのエスニック料理も食べられる。ほのかな照明、木で出来た机と椅子の感触、アロマの香り。

ひとつひとつが優しかった。

石川も優しくて柔らかい雰囲気の男だ。こういうところは吉田と似ているかもしれない。

石川は吉田についてたくさんのことを教えてくれた。

レバ刺しが好きなこと。それが食べられなくなると聞いて、無表情のまま落ち込んだように見えたこと。

単調なしゃべり方が仲間うちで物真似されていること。それだけで吉田の真似だと伝わること。

基本的に待ち合わせに遅れるということ。



何だか、聞いていてクスリと笑ってしまう。



そのようなところも含めて、石川は吉田のことを信頼している。石川は「会って1年で、こんなに信頼関係築けると思っていなかった」と語った。




【二人の出会い】

石川が吉田に会ったのは1年前。最初はmixiで知り合った。吉田のプロフィールを見て面白いと思い、自分からマイミク(Facebookで言うフレンド)の申請をした。

直接知り合ったのは、吉田が開いたSNS活用セミナーに参加してから。内容ではなく、吉田に関心があった。自分の周りにはいないタイプだったからだ。

石川は当時、お勤めの仕事ばかりで自分の時間がなかった。本当は絵の勉強がしたかった。「自分はこのままでいいのかな」と思っていたときだった。

セミナーを聞いてから、吉田のように複数の収入源を持ち、雇われない生き方について「自分とは違う世界なのかなあ」と思った。それでも、石川は「やりたいことをやらなきゃもったいないじゃん」と考え、吉田から学ぶことにした。



【ライバル企業の情報も提供】

石川が吉田に何の仕事をしているか聞いたとき、まず出てきたのがiPhoneの代理店事業。

石川はちょうどiPhoneが欲しかった。なので、「auにしようかSoftBankにしようか迷っているんですよね」と言ってみた。

吉田はSoftBankと提携していたが、「auの意見も聞いてみようか」と言って、au側の代理店事業をしている、自分の妹を紹介した。

石川は吉田について、相手が求めるものを提供する人と述べた。また、無理に相手の進路や選択を変えようとはしないし、エゴでものを言わないとした。そういうところが信頼されているようだ。

あくまでも判断材料をあげることにとどめる。

そして、話を聞くことを大事にしている。吉田と石川が話しているとき、両方が話そうとした瞬間、吉田は「いいよー」と譲る。そして、人のことを面白おかしくからかったりしない。だから石川は、自分の悩みを吉田に打ち明けることができた。



【疑問の答え合わせ】

(1)仕事人間なのか

石川は、吉田の学生時代からの友人兼ビジネスパートナーと、吉田の一日について想像したことがある。その友人によれば、吉田は起きたら静かに歯を磨き、セミナーの音声を聞き、ひたすら仕事をこなすだけだろうという。淡々と。

僕は吉田のことを、仕事の話しかしない人だなあと思っていた。

再取材をしてみて分かった。



やはり吉田は、仕事の話しかしないようだ。



ただし‥

真木「そういうところが、めちゃくちゃ愛されてるんだって分かりましたよ」。

石川「そうですね。愛されてますよ(笑)」。

ちなみに、石川は吉田と仕事をすることになってから、吉田からよく電話が来るようになったのを喜んだ。ここでも仕事の話が多かったが、それで石川は、「吉田さんに認めてもらいたいなあ」と思った。

なお、石川によると、吉田は夢について「俺はあんまり、そういうのない」と述べていたという。

夢に淡白で、遊びもしないと語る仕事人間。拍子抜けするほど仕事の話ばかり。だけどそこが慕われる。

吉田は、そういう、仕事人間。




(2)なぜセミナーに投資するのか

吉田は30万円はする高額セミナーにお金を投資している。僕には理由が分からなかった。

石川は、この点について「勉強するのが好きみたい」と言っている。

吉田は以前に取材した際、セミナーで学んだことを自己成長につなげるのが好きだと述べていた。

自己成長って何だ?

これは、昔は物欲や自分のことばかりだったのが、今は周りに刺激を与えること、人間関係に関心が移ったことを指しているらしい。

石川と話してから僕は「たぶん、人間関係に関心が移ったことが、慕われていることにつながっているのだろう」と考え、この日の取材を終わりにした。

僕がカフェを去るとき、石川は玄関まで見送ってくれた。彼はこの後も用事があってカフェに残った。石川がこのカフェで吉田と会ったときも、吉田に同じように見送ってもらったのだという。




【吉田との再会】



──ということがあったんですよ。



後日、吉田とは彼主催のTwitterセミナーでまた会えたので、僕は石川と会ったこと、見送りをしてくれたことを伝えた。

真木「逆に吉田さんも見送りしてあげていたらしいですね」。

吉田「そうでしたっけ?忘れてました」。



そうか。



この人、自分がしてあげたことを忘れてるんだ。だから、自己成長の結果を具体的に話せなかったんだ。エピソードを忘れているから。



声高に自分のアピールをしない人。だから、一見つかみどころがない。



だけど、知れば知るほど味が出る。



だから、レッテル貼らないでよく見てみよう。自分の目で。



どんな人なのか、自分の感覚で判断しよう。




ちなみに、僕が今回の取材を通し、”草食系起業家” の代わりに考えたあだ名は ”PULLの権化(ごんげ・・・※)”。

当たっているかな?吉田のことを、きちんと見ることができたかな?

それから、今回の記事の冒頭にあった似顔絵は石川が描いたもの。記事の発表に当たり、極秘で準備をしてもらった。文章と絵でジャンルは違うけど、どっちがよりよく見れたかな?

(※)”PULLの権化”・・・旧来の、目標のために「うおー!」と自分の意思を通そうとするのを ”PUSH” とするなら、脱力感たっぷりに淡々とこなす吉田の仕事ぶりは ”PULL”。恋愛も、告白されてから始まるそうだから、生き方自体が ”PULL” と言える。



【Shintaro Yoshida】

mixi⇨FREESTYLE

twitter⇨@shin_freestyle

Facebook ⇨吉田慎太郎

アメブロ⇨FREESTYLE〜自由な起業〜




Twitterセミナーの様子。緻密なノウハウを惜しみなく語る吉田。


(取材・執筆=真木風樹。本文の文責は真木風樹にあります)。


2013年1月1日火曜日

三人目【Shintaro Yoshida】そのレッテルを捨てろ



世の中には、「とらえどころのない人物」がいる。「どういう人?」と聞かれても、一言では表せない。形容し尽くせない。

しかし、人間は他者を見るとき、「◯◯の人」として認識しないと覚えておくことができない。形容しがたいその様子を無理にでも表現するため、人はレッテルを必要とする。「草食系男子」などがそれだ。

今回は、なぜか「草食系」に分類された人物のお話。



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某日、真木(筆者)の自室にて。



真木「うーん、あの人は ”草食系男子” なのか?この本にある説明に当てはまるのかなあ」。

僕はこのとき、「吉田慎太郎」という人物の記事を書いていた。彼は 草食系起業家 というキャッチフレーズで呼ばれている。ただ、会って取材した印象として、草食系に分類してよいのかよく分からないのだ。

では、草食系ではないとしたら、一体彼は何者なのか?ほかにふさわしい言葉が見つかったわけでもない。僕はモヤモヤしていた。




真木「あー書けないよー」。

何にせよまずは、彼と直接会ったときに見たもの、聞いたことを、ありのままで書いてみようと思う。

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吉田慎太郎(29)。髪はミディアムで襟足(えりあし)が長い。物腰は柔らかく、力まず淡々と話す人物だ。セミナー講師、インターネットのアフィリエイト、コンサルタント、IBOなど複数の仕事をしている。

この日、池袋のファミレスで僕らは会った。彼はトンカツ定食を頼んでいた。

真木「まずは、吉田さんの、ここまでの歴史を教えてもらえますか」。

吉田は「そうですね・・・」と語りはじめた。



【月収30万超えの高校生】


1983年、吉田は千葉県柏市に生まれた。彼が高校生だったころに両親は離婚しており、彼は高校を卒業したら働くよう言われていた。

ただし、吉田は「(それだけでは)ヤバそうだな」と考えたため、高校生でありながらお金の稼ぎ方を調べる。授業中に机の下でケータイをいじって情報収集していた。二つ折りの、白黒画面のdocomoのケータイから、問題解決の糸口を探していた。アルバイト代の全額に当たる6万円を毎月、ケータイ代に注ぎ込んだ。

結果、HPやメールマガジン(メルマガ)に広告を載せて収益を得ることに成功。月30〜40万円を得るようになった。



【経営者になる】

卒業後は就職も進学もしなかったが、月収200万円になった。19歳の頃には会社を設立した。

稼いだお金で物欲を満たしまくった。ルイ・ヴィトン LOUISVUITTON やクロムハーツ Chrome Hearts といったブランド品を買い漁る毎日。朝は口座から5万円を引き出し、1日でそれを使い切るという日々だった。30万円はする黒革のソファも買った。車にテレビにウオーターベッドも。欲しい物を買う瞬間は快感だったが、買い尽くしたときの感想は「面白くなかった」という。

一方、精神面では満たされておらず、従業員を雇うストレスから深夜は悪夢にうなされた。

これには説明が要るだろう。経営者は価値をつくろうとする一方、従業員は「出社すればお給料が出る」という考えで仕事をする。吉田が従業員を叱りたい場面もあったが、従業員は元は友達だったため、関係がギクシャクした。

病院に行くと「うつ」と診断された。このままでは危ないと考え、会社を休止して就職した。



【就職から複数事業へ】

それから、ケータイショップで販売の仕事を始めた。精神的に安定はしたという。吉田は社益を考える感覚があったため、トップセールスになった。ただし、好成績にもかかわらず、彼のお給料は手取りで23万円前後。大卒で年上の人より少なかった。

努力や成果が収入に反映されない。

このことで吉田は、お勤めについて「守られているけど、自分では決められないんだな」と再確認した。あらためて、ほかの事業を開始。副業を一つずつ増やして収入を拡大し、若くして会社をリタイアした。現在では10個ほどの商材を持っている。

収入面だけでなく、時間や人間関係のバランスも取れた仕事の仕方ができているという。



【吉田の謎】

歴史を一通り聞いた後は、吉田の価値観を聞くことにした。全質問を通して僕は「つかみどころがない」という印象を受けた。

(1)お金の使い方

吉田は、経営者だったころは若かったため、お金の使い道が分かっていなかったとの見方を示している。

真木「今なら何に使いますか?」

吉田「高額セミナーとかにお金を出して、自分が成長したり、勉強したりすることに使います」。

彼は、1回30万円はするセミナーについて言っている。今ならお金を自己投資に使うという。

それにしても、なぜセミナーにそんなにお金を使うのだろうか。この日の最後まで僕には分からなかった。

(2)メッセージ

真木「世の中や、これから出会う人にメッセージってありますか?」

吉田「そうですね・・・」。



・・・数秒の沈黙が続いた。もしかしてメッセージはないのか?

吉田「好きなことを仕事にしたらいいんじゃないでしょうか」。

好きだったら会社員でもいいけれども、せっかく人生の時間を使っているのだから、よく吟味してほしいという。

正論である。真っ当すぎて感慨がわかなかった。

(3)好きな遊び

吉田「自分、遊ばないんですよね」。

身もフタもない。話が続かなかった。





そのときである。僕は意外なことに気付いた。





…お分かりいただけただろうか?

吉田はトンカツをばっちり食べたが、キャベツは残している!

これは「俺は草食系ではない」という宣言だろうか?

取材は、キャベツが残ったまま終わった。

果たして、吉田のことを草食系と呼んでいいのだろうか?



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・・・というわけである。

だから僕は、自室で悩んでいた。

ギラつきのないさっぱりした人間にも見えるし、「仕事人間」にも見える。ただし「仕事人間」と言っても、昭和風の、書類の山を机に乗せて目から炎が出ているようなモーレツ系でもない。



一体、どう表現すればいい?


【そのレッテルを捨てろ】

”草食系男子” という用語について。『現代用語の基礎知識2012』によれば、「性欲が前面に出てこない内気な男子」とされている。2013年の最新版も同様だ。

吉田は一応、この定義に当てはまる。吉田の今までの恋愛は必ず告白されてから始まったのだという。それに僕が見る限り、性欲を前面に出すタイプではいない。

ただし、性欲が前面に出てくる男子って、そんなに多数派なのか?少し前はいっぱいいたのか?

恋心を押し殺して特攻した戦中男子も草食系か?

この定義に従うと、世の中は草食系男子だらけということになる。



この用語は、かなり大雑把な、しかも意味の定まらない言葉なのではないか?



補足すると、”草食系男子”という用語は時代とともに少しずつ意味も形態も変わってきているようだ。

使われはじめたのは2006年、深澤真紀というコラムニストの著書『草食男子世代─平成男子図鑑』からだとされる。この見方に従えば、深澤がこの用語の名付け親ということになる。

しかも、この時点では”草食男子” であり、”系” はなかった。

深澤は「恋愛やセックスにガツガツしていなくて、男女の友情も築ける存在」という、前向きなニュアンスでこの言葉を使ったのだった。

ところが、時と共に使われるニュアンスが変わる。女子からは「男子がオクテだから恋愛が始まらない」と言われ、目上の世代からは「物欲がないから消費もしない」と言われるようになる。

少子化も、車が売れないのも、草食系男子のせいだと思われているかもしれない。



さて、ここまで意味が拡大した用語で人を表現していいものか。

雑談ならまだしも、このページは取材した相手の「在り方」「様子」を真面目に伝えるためにある。

草食系 とレッテル貼りすれば記事はラクに仕上がる。ただし、それは安易な言葉を使って誤魔化すことだ。「吉田慎太郎」というテーマと格闘するのを放棄することになる。



真木の敗北宣言になるのだ。



「僕は吉田さんを表現できません。僕の理解力と表現力では無理です。だから草食系ってことにして、それ以上考えるのをやめます」と言っているようなもの。

それでも、ゴマカシを気にせず生きていくこともできる。だけど、僕は、それが、嫌だ。



だから、草食系男子 という表現はやめよう。そのレッテルをはがして捨てて、「吉田慎太郎」のありのままを見る。

もう一度書いておく。

レッテルを捨てて、ありのままを見るのだ。



やることはシンプルだ。もう一度取材するんだ。今度は別の角度から。

後編に続く

(取材・執筆=真木風樹。本文の文責は真木風樹にあります)。